2014年11月20日

高松市まちづくり学校「地域づくりチャレンジ塾」講座2

平成27年3月までの半年間、毎月開催していく高松「地域づくりチャレンジ塾」。
11月15日(土)に、第2回講座が終了しました。
第2回の会場は「相撲場」

私、高松に相撲場があること自体、知りませんでした。
場所は、香川県営野球場(レクザムスタジアム)がある「香川県総合運動公園」(生島町)の中。

公園とかに時々ある、吹きさらしの土俵をイメージして、
ここ数日、寒い日が続いていたし、寒いだろうな~と思いつつ、着いたら、こんな場所。
高松市まちづくり学校「地域づくりチャレンジ塾」講座2


屋根と壁がある!
こんな立派な場所だとは思いませんでした(スミマセン…)。

※受講生の中には「国技館」をイメージしていた方がいたらしいです(笑

さて、前回(第1回)は、「My Plan Me!編」ということで、
自分の過去・履歴などを振り返りつつ、「自分はどうしてコレをやりたいのか」を考えました。
今回、第2回は、5W1H。
「なぜ」(自分が行う原動力)、「なに」(を自分はしたいのか)…
という視点で、自分の考えを整理していくことになりました。
高松市まちづくり学校「地域づくりチャレンジ塾」講座2


左から、尾野塾長、眞鍋副塾長、
地元プレゼンターの「久保 月」さん、
岡山県矢掛町からお越しいただいたプレゼンターの「室 貴由輝」さん、
そして人見コーディネータ。

皆さん、裸足になるか足袋に履きかえられて、土俵に降りられています。


高松市まちづくり学校「地域づくりチャレンジ塾」講座2


「今日は“どすこい”でいきましょう」と眞鍋副塾長

では当日の模様をご紹介します。
いつものように、内外の方からケーススタディを伺って、それから、グループワークです。
まずは、高松市花園町でセレクトショップ「イクナスギャラリー」をやられている「久保 月」さんから。

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久保 月さん<株式会社tao.(IKUNAS主宰)>

「イクナス」(IKUNAS)というロゴは、逆から読むと「さぬき」(SANUKI)。
地元、讃岐を、「見方を変えたら面白いことになるだろう」というのを核にして、“ずんやり”やってます。
 ~“ずんやり”(←方言)がわからない方は検索を~

2002年にUターンで帰ってきて、グラフィックデザイン、中でも編集デザインをしていて、
2006年に、自分目線で発信する冊子「イクナス」というリトルプレスをつくったのが発端。

「イクナス」で、面白そう、紹介したいなぁと思って発信したのが、たまたま伝統工芸で。
そしたら、香川って、伝統工芸がいっぱいあって。
また、リトルプレスを見た人が、どこに行けば見られるの? って、問い合わせてくれるので、
「イクナスギャラリー」というセレクトショップを、デザイン事務所の横のスペースに持つことにして。
そしたら、お客さんの“こんなの欲しい”って言う声が聞こえてくるので、
なんとなく、職人さんとお客さんとの間に立つようになって。
<自分たちが考えて、職人さんにつくってもらって、自分たちが売る>という立場になりました。

伝統工芸品、「高い」とか「使い難い」とかって言われるじゃないですか。
じゃあ、実際に使ってもらおうと、
“こんな使い方どうですか”と提案するワークショップとかやるようになって。
そうすると職人さんと連帯関係が生まれてきて、
今は、職人さん、5者が毎月集まる「さぬきざんまい」という寄り合いをやったり、
自分たちイクナスとだけじゃなく、
アイディアを持っているクリエイターと職人さんをつなげる「SANUKISAN(讃岐産)」というマッチング事業もやるようになって。

まぁ、そんなことをやってきてます。

高松市まちづくり学校「地域づくりチャレンジ塾」講座2


1人では話しにくいからと、人見さんとの対話形式で進行。


人見さん
デザイナーの仕事、お客さんの御用に応えるのが普通だと思いますが、
久保さんは、自分たちが欲しいものを提案して、つくってもらって、世に出している。
これって、大変な苦労があるんじゃないかと思うんですが。


久保さん
私、思考直結型で、スタッフからも「苦労を苦労と思わない」と言われてるんです。“何とかなるやろ”と思って、すぐにやろうとしちゃう。
でも、<目指すところと、自分ができるボーダーとの位置関係>によって、<誰とやるか>というセレクトが必要になるんです。
ココを間違うと面倒なことになる。
自分でやるだけなら、誰でもできるんです。やろうとさえすれば。

そう。皆さん、マンガの「ワンピース」って、ご存じですか?(笑)
最近、はまって、大人買いしちゃったんですけど、
主人公の「ルフィ」、自分勝手で、もう、メチャクチャ。
でも、仲間が多くて、自分ができないことは、できる仲間に任せる、頼る。
ルフィ、すごいっ。私、ルフィになろうと(笑)
よく、<何かをやる時は、人を巻き込もうよ>っていいますけど、
それは、できる人を得ることで、できないことができるようになる、
できるボーダーが上がるということなんですよね。
だから、私、頼れそうな人のアンテナはすっごい張ってます。

眞鍋さん
今後の展開をご紹介ください。


久保さん
未来って、自分一人ではつくれないし、誰にもわからないけど、
自分がやれることを楽しんでやる、そうやって仕掛けることはできますよね。
今、リトルプレスのイクナスは休刊していますけど、
流通がキチッと機能しないと、ものづくりの現場はうまくいかないので、
十年やってきたことを踏まえて、新たに情報発信媒体をつくろうとしています。

眞鍋さん
「作り手」、「使い手」がいるとすれば、「伝え手」ですね。
作り手の後継者不足の課題って、経済的な課題とともに、社会的評価が課題になってると思うんです。「漆器つくってる、カッコいい」っていうような評価。
それは「伝え手」の役割かもしれない。


久保さん
まさにそうです。私は「にぎやかし」と言ってますけど、今、「にぎやかし」の人間が頑張らないといけないと思ってます。

尾野さん
久保さんの立ち位置を考えると、まず「デザイナー」。その中でもニッチな「編集デザイン」。そして、「香川の伝統工芸ものづくりのプロデュース」をやっている。
 こういう<3階層>になっているので、とても明確ですね。
私ですと、「古本屋」、その中でも「専門書が専門の古本屋」、そして、「島根の過疎地」でやっているという3階層。
こういう立ち位置、領域になるまで、どのぐらい期間がかかってますか。


久保さん
う~ん、10年ですかねぇ。
私、スタッフのデザイナーには、自分を出したがるなと言ってるんです。
良い場合もあるんですが、自分の引き出しを自分で決めて、可能性を消してしまってるかも知れない。
自分で決めずに、人から“あなたは○○だよね”っていう蓄積をもらいなさい、と言ってます。それを自分に当てはめると、10年ぐらいかかってますね。
~私も10年ですね、と、尾野さん。
思考直結型ですけど、意外と慎重派なんです(笑)

室さん
すごく計画的にやられてると感じました。
それは性格なんでしょうか、それとも、スケジュールとか緻密にたててやられてるんでしょうか。


久保さん
計画性はないです。面白いと思ったことをやってます。
ただ、俯瞰して見るクセはあります。
全体の動きを見て、見てる中に自分もいて、自分の立ち位置を見て確認しています。
今も、話をしながら、皆さんの反応を見て、話を軌道修正しています。

と、淡々と話される久保さん。
ほかにも、受講生から、子育てと仕事の両立など、質問が相次ぎました。
  ~「淡々とした語り口がツボ」。これは、尾野塾長からの感想です。


続いて、岡山県矢掛町からお越しいただいた室先生。
体育の先生ですが、環境教育、地元の「やかげ学」などをやられていて、
姉妹講座になる岡山県いかさ地域の「いかさ田舎カレッジ」にも関わられています。

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室 貴由輝さん(岡山県矢掛町・矢掛中学校主幹教諭)

キッカケは、矢掛商業高校に勤務されていた平成11年。
目を輝かせて川の中の魚を見ている生徒を見た時だそうです。学校では見たことない表情。
それを見て、川を教材にしようとされます。
まず、蛍を養殖し、せっかく育てたんだからと学校で飛ばして、それを鑑賞会にしたら近所の人が大勢来られて。
蛍の養殖では、川の中で育っているところが見えないから、魚の繁殖をやり始めたら、町のポケット水族館とのコラボも始まって。
そしたら、生徒が変わってきているのを実感されていたそうです。

そんな活動をされていた平成16年、高校再編の準備が始まります。
その時、学校独自の教科を設けないかという話が県からあり、
川の教材が良かったから、それなら、社会や理科などいろいろな要素が関係する「環境」を学校設定教科にしようと提案され、そして、実際にやることになります。

ところが、誰もやったことがないので、カリキュラムがない。どう教えたら良いのかわからない。教科書もない。
困って、岡山大学の小野教授にスーパーバイザーをお願いし、教えてもらうことになります。
そこで、教えていただいた一つが、「ESD」。
 ※ESD:持続発展教育(Education for Sustainable Development)
ESDには、食料問題、環境問題、人権問題、宗教問題などいろいろありますが、
再編後の矢掛高校では、<環境教育を入り口にしたESD>、
持続可能な社会をつくるためにどうしたらいいのか、ということを、環境面から考えるというプログラムを始められます。
高松市まちづくり学校「地域づくりチャレンジ塾」講座2



具体的には、生徒と視察へ行ったり、フィールドワークを行ったり。
例えば、無人島へ行くと、人がいないのにゴミがいっぱいある。このゴミはどこから来たんだろうと考えるプログラム。
年に一回、どぶ掃除をやって、そして、祭りが行われる。清掃と伝統行事とがセットになっていることを体験するプログラム。

そして、平成22年、環境教育から、地域連携の部分を発展させた「やかげ学」が始まります。

矢掛高校。平成18年に矢掛商業高校と合併して生まれましたが、合併したため、いろんな生徒がいるんです。
卒業して国公立大学に入学する生徒もいれば、就職する生徒もいる。
学力に大きな差があり、学校の目標が定まらず、両方から敬遠されるようになってきました。
生徒も、目的意識が希薄な生徒が多かった。
高校再編で新しく誕生したとはいえ、過疎地の高校です。周囲には、総社市や井原市など大きな町がある。いつまでも存続できるとは限らない。
生徒が、町のことを知り、学校外の人と触れあうことで、目標を持てるようになるのではないかと考えたんです。

「やかげ学」は、高校2年生から始まります。
まず、2年生の1学期は、町役場の方から、町のことを学びます。
そして2学期から1年間、地域の施設で実習し、
3年生の12月に、発表します。
実習は、週に2時間。幼稚園や小学校、高齢者施設、農業体験施設などの施設で働きます。
実際に働きながら、自分たちに何ができるかを考えます。
教師は、手分けして、実習先をまわっています。

先輩から後輩へ受け継がれていくので、受け入れ先には、高校生が、毎週、途切れることなく来ることで、喜ばれて、
生徒も、喜ばれることでやる気が出ているようです。
実際に、問題児がチームの中心になって活動したり、
大学卒業後、町に戻ってくる生徒があらわれたりしています。
戻ってきた生徒の中には、「やかげ学」を体験した町外出身の生徒もいます。

町の人たちも、子どもたちが町へ出て行くので、“しがらみ”が出てこない。
大人を巻き込んだまちづくりが、学校とともに生まれはじめていて、
今、矢掛町に、<町の未来を考える場>が生まれつつあると感じているところです。

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冒頭、「矢掛でやってきたことは“わらしべ長者”のようなもので、計画性がない」と言われていましたが、なんのなんの。“進化のさま”がすごいです。

尾野さん
ものすごく緻密なプログラムだけど、プランが進化するとシンプルになりますね。
眞鍋さん
まちづくりは人づくりというけど、まさに、人づくりですね。
ところで、どうして、今、中学校の先生なんですか?

(→異動に従っているだけで、どうしてなのかは、室先生も、わからないそうです)

以上、今回も、濃厚なケーススタディを2例、伺わせていただきました。
あとで伺ったら、受講生の皆さんも、かなり刺激を受けられたそうです。
そんな状態で、室先生を含めた3班に分かれてグループワーク。

高松市まちづくり学校「地域づくりチャレンジ塾」講座2



 最後、感想をいただきました。

眞鍋さん
 具体化できてる人、結構、いらっしゃいます。
 できてる人は、考えるよりも、小さなコトからやってしまいましょう。

室先生
 まだ2回目なのに、実現できるプランが多いですね。
 やりながら修正していけば良いと思います。


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文:川井(サブ・コーディネータ、四国経済産業局)






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Posted by 高松市市民活動センター at 10:28│Comments(0)地域づくりチャレンジ塾
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